「進行性核上性麻痺の父が誤嚥性肺炎で入院!退院後の全身状態はどうケアしたらいい?」
こんにちは!進行性核上性麻痺の父を妹たちと介護している長女のゆるねえです。 介護福祉士の資格をもっています。
進行性核上性麻痺の父が誤嚥性肺炎で入院した時の記事をシリーズでお届けしています。
前回までの記事はこちら。
今回はシリーズ最後となる4記事目、退院後の全身状態のケアについてお話します。
介護にまつわる状況は様々。
本人の年齢、持病、性格、人生観や価値観、嗜好、お金や家族の介護力、住んでいるところによって利用できる医療や介護サービスetc…
色々な条件によって、生活の質が変わってきます。
ご紹介するのは、あくまでも父の場合。
介護は十人十色ですが、私たちの経験が、少しでもお役に立てればうれしいです(^^♪
ではまず、負のスパイラルから脱出するために大切なことを、前回の記事の復習も兼ねて2点お伝えします。
負のスパイラルから脱出するために大事なことは?
負のスパイラルから脱出するためには、「栄養・口の中の状態」と「全身状態」のケアがとっても大事。
退院後の栄養摂取の目標は、誤嚥性肺炎の正しい知識のもと「疲れないように飲んで食べてもらう」でした。
この「疲れないように…」という目標が大事な理由は、 退院した時の父はこんな状態だったからです。
- やせ細り、いつも眠っているよう。
- 絶えず口は開いている。
- 口に食べ物をいれてもすぐには咀嚼しない。
- 起きてもすぐ眠気がくる。
入院中は寝たきり、ほとんど口から食べていません。
ということは、、、
- 筋力低下
- 体を動かす機能も低下
- 食べる機能も低下
このままだと脱水の危機、すでに低栄養状態(*)ということ。
これが負のスパイラル!
らせん階段を下っています(ノД`)・゜・。
この状態の父は、咀嚼するのも疲れる状態。 すぐ眠気もきます。
口の中に食べ物が入っているときに、眠気がでたら、誤嚥してしまいます。
そういう理由で、負のスパイラルから脱出するには、疲れないように少しづつ食べる力をつけていくことが大切なのです。
退院後の「栄養・口の中の状態」についての詳細は、シリーズ#3の記事をご覧ください(^-^)
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では、この記事のテーマである「全身状態」について、我が家で気を付けて行ったことをお話します。
退院後に我が家で気を付けた「負のスパイラル脱出の全身ケア」とは
ポイント①食前食後の吸引
ポイントの1つめは、食前食後の「口腔内の吸引」です。
吸引器を使った口腔内吸引を訪問診療医の指示のもと訪問看護師さんに指導してもらいました。
食前の吸引
退院時の父は、ベッドに横になっている時に、急に「あー」と声をあげ、お腹に力をいれると、ケポっと痰がでることがありました。
(横になっている姿勢のことを介護の用語で臥床といいます)
誤嚥性肺炎の原因は、食事中の食べ物の誤嚥だけではありません。
本来、唾液は口腔内の乾燥を防ぎ、細菌の増殖を抑えてくれる強い味方です。
でも、父の場合は絶えず口が開いているので、乾燥して細菌が増えているかもしれない状態(>_<)
不衛生な痰や唾液の誤嚥は誤嚥性肺炎につながります。
父は、あごがあがりやすいので、ただでさえ痰や唾液を誤嚥しやすい状況です。
おまけに
- 退院後の衰弱で飲み込む力もさらに弱い
- 絶えず口が開くことで口腔内が乾燥しやすく痰もかたくなりやすい
これでは寝ているときも痰や唾液が喉にたまっています。
自分だったら呼吸するのも苦しいですよね。
後で詳しくお話しますが、口腔内が乾燥しないように加湿にも特に気を付けました。
あごがあがりやすい父は、枕とクッション、バスタオル等を使い、臥床中もあごをひいた姿勢にしていましたが、それでも喉に痰が溜まりやすい部分があり(口腔スポンジではとれない)、食前はそこに溜まっているものを重点的に吸引しました。
食後の吸引
父は飲み込む力が弱く、喉に食べ物や痰が残りやすいです。
口腔ケアで取り除きますが、取りきれなかったものを吸引します。
でも、口の奥の方を刺激すると、オエっとなりやすいですよね。
食後お腹がいっぱいの時には嘔吐につながるので、気を付けて無理なく行いました。
吸引器の写真はこちらです。
次はベッドでの食事中、食後の姿勢です。
ポイント② 食事中、食後のベッドでの姿勢
ベッドでの食事の時の姿勢についてです。
食後もすぐに平らにするのではなく、リクライニング角度30~40度で休んでもらいました。
体調に合わせますが父の場合は1~3時間くらいです。
時間があるときは少しづつ角度を低くしたり、軽く横向きになってもらいました。
(横向きに寝ている状態は介護の用語で側臥位(*)といいます)
では、なぜリクライニングの姿勢が大事なのかご説明しますね。
食後すぐにベッドを平らにしない理由は?
食後すぐにベッドを平らにしないのは、こんな理由からです。
- 日中の覚醒を促せる(本人の好きなことで、生活のリズムを作る)
- もし食後に胃から食べ物の逆流があった場合は、嘔吐物の誤嚥のリスクを減らすことができる。(もちろん痰や汚れのある唾液も)
- 平らな状態で寝ているときより呼吸しやすい→大きく呼吸ができ、力強く痰を排出できる。
父のベッドはこの頃もすでにエアーマット(*)でした。
ベッドはリモコンの連動ボタンを押すと足の膝のあたりが先にあがり、次に頭側があがり、最終的にはちょっとした椅子のように足元が下がるという優れモノ。
リクライニングした椅子でリラックスしている状態を再現でき助かりました(^^♪
こちらの本は、ベッドや車イスでの食事に適した姿勢が写真付きで載っています。
実践するのにとてもわかりやすく、参考になりました。
こちらは、口から食べる食支援について、わかりやすい言葉とイラストで学習できる本です。
負のスパイラル脱出のための注意点や希望を、 訪問診療、看護、介護のスタッフ(父の場合はあわせて十数人)に共有するのは本当にハードルが高いです。
専門職の人たちからすると「家族は知識もないのに、摂食嚥下障害のある人に食事介助を望んでいる」と思われちゃうかも(>_<)
そんな時は 「我が家はこの本を参考にケアをしていきたいので、共有してください」と伝えるといいかも!
医療、介護職と共有し、目指す方向を可視化できる2冊です。
次は食後のベッドでのリクライニングの注意点です。
食後のリクライニング(角度30~60度)における注意点は?
食後のベッド上でのリクライニング角度について、注意点をお伝えします。
- ベッドの足上げを高くしすぎて腹圧をがかかりすぎないようにする。 (腹圧がかかりすぎると、胃からの逆流(嘔吐)につながる場合もあります)
- 褥瘡のリスク(リクライニング時の姿勢と圧抜きと背抜き)
幸い父は、1時間近く同じ姿勢で座っていても、圧迫によりお尻に赤みができることはほとんどありませんでした。
しかし、もともと低栄養により皮膚が薄くなっていたり、脂肪や筋肉がなくお尻の骨が突出している場合は、圧迫した部分が褥瘡になるリスク大です。
褥瘡はマットレスの圧迫だけではなく、ずれや摩擦でもなります。
例えば歯の治療の時や美容院でシャンプーをする際に、リクライニングのイスの背がゆっくり倒れますよね。
その時に皮膚がよれて圧がかかった部分や服のしわを伸ばすのに、私たちは無意識に「もぞもぞ」と体を動かします。
自分では 、その「もぞもぞ」ができないってこと!(>_<)
そのため、体を動かしたあとは1点にかかる圧を抜くために必ず圧抜き(*)をします。
圧抜きグローブの写真はこちら。
(グローブがなくてもエアマットを押したり、体を一度ベッドから離す方法もあります)
また、ベッドの上部を上げるときに曲がる部位置と股関節の位置があっていないと、背骨が曲がり痛みが生じ全身の拘縮(*)も進んでしまいます。
ギャッチアップの前には体をベッドの上の方に動いてもらい、股関節とベッドの曲がる部分があっているか確認して、ギャッジアップです。(骨盤が立つように)
体をベッドの上にあげるスライドシートはこちらです。
スライドシートはベッド上での皮膚の摩擦を防ぎ、軽い力で体を動かすことができます。
そうそう、ベッドをギャッジアップした時は、見守りをお忘れなく!
ギャッジアップしているときに手すりに掴まろうと手を伸ばしたり、眠ってしまい体が傾いていたら、、、想像するとぞっとしますね。
そのまま転落したり、手すりに強打するなどの事故があったら大変です。
「動かないから大丈夫」という言葉は、介護の辞書にはありません。
次は、訪問介護のケアの内容を、 疲れにくい形に変更してもらったことです。
ポイント③疲労防止のための訪問介護ケアの変更
入院前までの訪問介護では、ベッドから起こしてもらった後はこのような介助をしてもらっていました。
①介助で立ち上がり
↓
②手すりにつかまり立位を保ち
↓
③ポータブルトイレに座って排泄後
↓
④移動して食卓で食事
でもそこまで行うと、疲れて食べることができない可能性がありました。
疲労防止のために、上記の①~④はあきらめ、ベッド上での体力温存作戦です。
このような介助に変更しました。
退院後すぐに訪問介護のサービス提供責任者と相談し、ヘルパーさんに共有してもらいました。
つぎは、父の部屋の室温と湿度についてです。
ポイント④ 一年を通して湿度・室温を一定に
我が家の地域は、加湿器やエアコン(暖房、冷房)が必須でした。
湿度
部屋は年中一定の湿度にします。
枕やタオルであごをひくように整えても、父はすぐ口が開いてしまったので、口腔内の乾燥防止にも室内の加湿は必須です。
口の中を乾燥させると細菌が増えて誤嚥性肺炎の危険度アップです。
風邪やインフルエンザの予防にもなり、父には55%~60%の湿度がよいみたいでした。
乾燥している時は、痰もかたくなり出しにくいですよね。
室温
室温も一定にしました。
温度調節が苦手で室温によって体が熱くなり汗を多量にかいたり、すぐ手足が冷たくなりました。
手足が冷たいと体の動きにも影響があります。
真冬はレッグウォーマー、アームウォーマーつけたり、肩口が冷えないように肩当てを着てもらった時もありました。
夏はアイスノンで頭を冷やした時も。
父の場合は22~24度の室温だと手足が冷えたり、多量の汗をかくことはなかったです。
父は本当はエアコンが嫌い。同居の頃は、冬の暖房は広い部屋でも小さなストーブひとつのみ。
寒がりな私は辛かった(;^_^A
次は、最後のポイント、皮膚状態の観察についてです。
ポイント⑤ 常に全身の皮膚状態を観察
皮膚の状態についてはこんなことに気を付けました。
室内の乾燥だけでなく、皮膚の乾燥にも注意です。
乾燥は摩擦がおきやすく、皮膚が褥瘡や傷ができたり、剥離(*)して出血につながりやすいのです。
もし褥瘡や皮膚の剥離がお尻にできたら、痛みもあるし、皮膚の悪化防止のために座ったり動いたりできなくなることも!
それは、適切な姿勢で食べられなくなる可能性がでてくるということ!
褥瘡にならないように予防するのが大事です。
皮膚が乾燥気味の時はこまめにワセリンやキュレル等の保湿剤を適量、とってもやさしく全身に塗りました。
低栄養でも皮膚はもろくなります。
すぐ内出血もおこり、剥離してしまいます。
手で上から掴んだりするのはもってのほか!やさしく下から持ち、保湿剤を塗るときも肌理(*)にそって横にやさしくです。
ワセリン、キュレルの写真です。
市販の香りのよい保湿クリームもありますが、ヒヤッとするのが苦手なので我が家はワセリンを愛用しています。
こちらのキュレルは頭皮用ですがボディクリームもあります。
こちらの「新床ずれケアナビ」という本は、写真付きで情報がたっぷりで役立ちました。
以上の5つのポイントに沿って、退院後の5日間、試行錯誤しながら負のスパイラルを脱出できました!
2020年4月現在は、多機能、モジュールタイプのティルト式車いすに40~50度のリクライニング角度で座り、食卓で食事をしています。
食前食後の吸引は、痰が多い時や食べ物が咽頭に張り付いてとれない時だけになりましたよ。
では全身状態のケアについて、まとめます。
まとめ
次の5つのポイントが、食べるための全身状態維持につながりました。
ポイント①食前食後の吸引
- 食前は喉に溜まっている痰や唾液の吸引でスッキリ。
- 食後は飲み込むパワー不足で喉にたまった飲食物や痰を吸引する。
ポイント②ベッドでの食事中、食後のリクライニング角度は30~60度で
- 食事に集中できる上半身はリラックス、下半身は安定の姿勢をつくる。
- 嘔吐による誤嚥防止と呼吸しやすい姿勢をつくる。 (必ずあごをひき、上半身は枕、タオルでリラックス、下半身は足底にタオルやクッションで安定)
ポイント③疲労防止のための訪問介護のケアの変更
- 疲労防止のために訪問介護のケアをサービス提供責任者と調整し、目標をヘルパーに共有してもらう。
ポイント④一年を通して室温・湿度を一定に
- 常に適した湿度に加湿することは 、口腔内の乾燥を防ぎ、誤嚥性肺炎の予防につながる。痰がだしやすくなる。
- 快適な室温にすることは、体の緊張を防ぎ、多量の発汗や冷え等による食事前の着替え等の疲労を防止する。
ポイント⑤常に全身の皮膚状態を観察
- 誤嚥性肺炎の予防のため、 口腔内を観察。
- 褥瘡の早期発見と予防。
やることがいっぱいあって大変に感じるかもしれませんが、在宅サービスで利用している医療、介護のスタッフの方々と相談できます。
ひとりで抱え込む必要はありません。
今回の記事には書いてありませんが迷いがあったり反省したり、悩むこともたくさんあったんですよ。
以上、『進行性核上性麻痺の父が誤嚥性肺炎で入院#4:退院後の「負のスパイラル」から脱出した全身ケアとは』でした!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
このブログでは、介護に役立つ情報を引き続きお届けしていきます。他の記事もぜひご覧ください。
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